サ行が目立って録れているとき — 原因と対処
高い側をまとめて下げてみたら、全体が曇った。
サ行が耳につくようになってから、そう試して戻した。その状態で測ると、この録音は 5〜8 kHz が、その下の 1〜4 kHz に対して相対的に多く残っているという結果になります。
曇ったのは、下げ方が乱暴だったからではありません。 下げたい帯の幅と、下げる道具の区切りが合っていないからです。この粒度の差が前半。この項目だけ信頼度に上限が付いている理由と、ブラウザの設定では動かないと言い切れる理由が後半です。
画面にはこう出ています
[5] 録れ方の判定 側:
この録音では 5〜8 kHz が 1〜4 kHz に対して
{SIB}と多く残っていて、子音の細部まで拾えた録れ方です。 息づかいまで残したい歌唱・朗読の収録と噛み合う傾向です。 ただし 5〜8 kHz が優勢なぶん、サ行・シャ行が刺さって聞こえやすく、母音の芯は相対的に細く出ます。
[2] 対処 側:
サ行が目立っている この録音では 5〜8 kHz が 1〜4 kHz に対して
{SIB}でした。サ行・シャ行が刺さって聞こえやすい状態です。
▸ マイクとの距離を 20 cm 確保し、口の正面から 15〜30 度ずらす 見込み幅: 5〜8 kHz が数 dB 下がる可能性があります(角度と距離の取り方で幅が出ます)
何を測ってこの判定が出ているか
見ているのは 5〜8 kHz と 1〜4 kHz のエネルギーの比です。当サイトの内部では SIB と呼んでいます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 分子 | 5〜8 kHz。サ行・シャ行の成分と、子音の細部が乗る帯域 |
| 分母 | 1〜4 kHz。母音の芯を含む帯域 |
| 判定の境界 | −12.0 dB 以上。この比がこれを上回ると「サ行が目立っている」が出ます |
| 信頼度 | 上限が中間に固定されています(→ 次節) |
この項目には信頼度の上限が付いています
当サイトの声の 4 項目のうち、上限が付いているのはこの項目と、息の成分の項目の 2 つです。 残り 2 つ(低い側 / 中高域)には上限が無く、条件が揃えば最も高い信頼度で出ます。
この項目の上限が中間である理由は、測り方の側にあります。 サ行の量を安定して測るには、歯擦音を多く含む課題文を読み上げてもらうのが本来の手順です。この版の当サイトには、その課題文を読ませる導線がありません。したがって、測定の 5 秒で何を話したかによって、5〜8 kHz に入る量が変わります。 サ行がほとんど出てこない 5 秒なら、この比は低く出ます。
そこで当サイトは、この項目を出したうえで、信頼度に上限を置いています。 出さないのではなく、出し方に印を付けるという扱いです。
この判定が出せなくなる条件
- 8000 Hz より上が残っていないとき。分子の 5〜8 kHz が欠けます(→ 高い音が録音に残っていないとき)
- 声とまわりの音の差が 10 dB 未満のとき(→ まわりの音が録音に混ざっているとき)
- 歪みが 1 % を超えたとき。歪みは、もとの音に無かった高い成分を作り出します。 5〜8 kHz に出ている量が声のものか歪みのものか区別できないので、この項目は出しません
なぜサ行の帯だけが強く出るのか
- 口の正面にマイクがあること。 サ行の成分は口の正面へまっすぐ強く飛びます。軸を外すと、その帯だけが先に落ちます。 低い帯は回り込むので残ります。
- 距離が近いこと。 理由は 1 と同じです。正面かつ近いほど、この帯が強く届きます。
- マイクそのものの特性。 高い側が持ち上がった特性のマイクに替えると、同じ話し方でもこの比は上がります。買い替えてから耳につくようになった、という順序は、ここで説明が付きます。
- ブラウザの 3 つの設定。 どれを切り替えてもほとんど動きません(→ 次節)。
ブラウザの設定で動く項目ではありません
[4] このブラウザの音声処理 の 3 つ(エコー除去・ノイズ抑制・自動ゲイン調整)を切り替えても、この比はほとんど動きません。3 つとも、5〜8 kHz と 1〜4 kHz の比を狙って動かす処理ではないからです。
当サイトが [2] に置き方だけを出しているのは、切り替えても差分がほとんど出ないことを分かっていて出していないためです。ブラウザの設定で扱える項目ではない、というのがこの項目の答えです。
試す順番
- 距離を 20 cm 確保して、測り直す。
- 口の正面から 15〜30 度ずらす。 または、マイクを口の高さより少し下に置きます。サ行の成分が飛ぶ向きから外すのが狙いです。
- ここまでで残ったときだけ、削る手を考えます。
[2]の OBS 欄に目安が出ています。
高い側を一括で下げると、曇ります。 OBS の
3-Band Equalizer(帯ごとに上げ下げする)は、高域の区切りが 5000 Hz 以上でひとまとまりです。下げたい 5〜8 kHz より広い範囲が、一緒に動きます。 一緒に下がるのは、言葉の細部を運んでいる成分でもあります。高い側をまとめて下げて全体が曇った、という経験は、この粒度の差から出ています。 5〜8 kHz だけを狭く扱うには、その帯を検出して下げる部品が別に要ります。 当サイトが[2]に出しているのが確定値ではなく目安なのは、この粒度の差があるためです。 確定値として出すと、下がりすぎたときに数字の側が正しかったことになってしまいます。
変えても動かなかったとき
| 確かめること | 次に読むページ |
|---|---|
| そもそも 8000 Hz より上が残っているか | 高い音が録音に残っていないとき |
| 「信頼度を下げています」の行が出ていないか | まわりの音が録音に混ざっているとき |
| 5 秒のあいだにサ行がほとんど出てこなかった可能性 | サ行を含む文で、もう一度測り直します。 上限が中間である理由がここにあります |
| この項目だけ「判定できません」と出ている | 一部の項目だけ「判定できません」と出たとき |
一緒に出やすい判定
高い音が録音に残っていない判定が立つと、この項目は消えます。 5〜8 kHz が無ければ分子が無いからです。したがって、この 2 つが同時に出ることはありません。 8 つの判定の中で、片方が立つともう片方が必ず消える組み合わせは、これだけです。 → 高い音が録音に残っていないとき
こもりがちに録れている判定とは、分母も分子も違います。 あちらは 2〜4 kHz ÷ 0.1〜1 kHz、こちらは 5〜8 kHz ÷ 1〜4 kHz です。帯域が一部重なっているだけで、別の比です。 両方が同時に立つ録音はあり、その場合は「中高域が控えめで、その上が多い」という配分になります。このとき高い側を下げると、控えめな中高域との差はさらに開きます。 順序としては、置き方を直すほうが先です。 → 録音がこもりがちに録れているとき
息の成分の項目とは、材料の一部が重なります。 どちらも高い側の帯の量を見ています。ただし同時に出ても、片方をもう片方の裏付けには使えません。 あちらは 3 つの量を合成した無次元の値で、信頼度が最も低い側に固定されているからです。 → 息の音が一緒に録れているとき
この判定で言えないこと
- −12.0 dB という境界は、いまのところ仮の値です。 実測による較正は今後の課題として残っています。
- 信頼度の上限が中間であることは、この項目に固有の留保です。 課題文を読ませる導線がこの版にないので、同じマイク・同じ設定でも、話した内容によって値が動きます。
- 刺さって聞こえるかどうかは、聞き手の側の話です。 当サイトは 5〜8 kHz と 1〜4 kHz の比を測っているだけで、聞こえ方を測ってはいません。
- サ行の発音についての判定ではありません。 測っているのは、マイクとブラウザを通ったあとの帯域の配分です。
- 見込み幅の「数 dB」は角度と距離の取り方で幅が出るという意味であって、保証値ではありません。
- 当サイトはマイクと録音の状態を測るツールです。医学的な判断や助言は行いません。→ 免責事項
もう一度測る
角度だけを変えて、もう一度測ってください。距離と角度を同時に変えないほうが、どちらが効いたのかが読めます。
→ いまの状態を測る
関連するページ
- 音質パターン一覧 — 10 種類の判定の索引
- このブラウザの音声処理 —
[4]で 3 つの設定の申告値と実際の差分を表示しています - このサイトについて / 免責事項